AUDに関するQ&A

AUD試験に関する質問や悩みをQ&A方式で並べています。ぜひ参考にしてください。

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目次

Financial Statements Audits (財務諸表監査)

Q1: Assertion (アサーション)について上手くイメージが出来ません。どのようにイメージしたらよいのでしょうか?

A1: 監査人は「財務諸表が適切に表示されている」かどうかについて意見を表明します。

しかし、「財務諸表が適切に表示されている」という表現は漠然としています。そこで、財務諸表の適切性について財務諸表を構成する項目に分類して、具体的な言葉で表現したものがAssertion (アサーション)と呼ばれます。Assertion (アサーション)は例えば、「貸借対照表には現金及び現金同等物がすべて計上されている(網羅性)」、「売掛金と貸倒引当金は適正に評価されている(評価)」、「利息は正しい会計年度に配分されている(カットオフ)」などと表現されて、監査人はこれらのAssertion (アサーション)を個々に検証して、その結果を積み重ねて財務諸表が適切に表示されているかどうかを評価します。

Q2: 監査手続きとAssertion (アサーション)の対応関係が分かりません。適切なAssertion (アサーション)を判断するための基準はありますか?

A2: Assertion (アサーション)が問われる問題では、まず監査手続きの対象となる勘定科目に注目してください。勘定科目がBS項目か、PL項目かに応じて、該当するAssertion (アサーション)がどの分類に属するかが分かります。

期末における勘定残高に関するAssertion (アサーション)は、貸借対照表(B/S)に計上される勘定科目、つまり資産・負債・資本に関連するものです。

表示と開示に関するAssertion (アサーション)とは、B/S,P/Lに計上される数値以外で財務諸表(主に注記)に記載される項目に関するものです。具体的には、流動・非流動の分類、キャッシュフロー計算書、注記事項、関連当事者取引などがあります。

この分類に従って、Assertion (アサーション)をまとめると、以下のようになります。

B/Sの項目:existence,rights & obligatoins,completeness,valuation & allocation
P/Lの項目:occurrence,completeness,accuracy,cutoff,classification

表示と開示:occurence & rights & obligations,completeness,classfication & understandability,accuracy & valuation

Q3: 「利益が出ているので、固有リスクが下がる」とはどういう意味なのでしょうか?

A3: 一般的な理由の一つとして挙げられるのは、利益が出ている=fraudulent financial reporting (粉飾決算)を誘発するincentiveが低いとうことです。(もっとも、脱税等の目的で決算を実際よりも悪く改変する、いわゆる逆粉飾の可能性も無いとは言い切れません。)

他には、企業で利益が出ていないと、給与カットや賞与が減るなどにより従業員のモラルダウンにつながり、固有リスクアップの要因となるなども考えられます。

Q4: 経理部門のマネージャーの能力不足がどうして固有リスクを増加させるのですか?統制リスクを増加させると考えた方がいいのではないでしょうか?

A4: 固有リスクとは、内部統制の質に関係なく発生するリスクのことです。経理部門のマネージャーの能力が低い場合、様々な内部統制に悪影響を与える為、内部統制を設定しただけではカバーしきれません。

また、能力の低い人材を採用していることは、個々の統制の問題というよりは、企業全体の人事管理の問題になります。そのため、統制リスクではなく、固有リスクを増加させる要因となります。

Q5: 給与の不平不満はどうして監査リスクを増加させないのですか?

A5: 「給与の不満はよくあること」で、それは企業風土あるいは統制環境には影響を与えますが、そのことが内部統制を働かなくさせるか、というとそういうものではありません。

判断基準はその評価方法です。きちんとしたアセスメントや質問をした結果、組織の内部統制の問題点と監査人が判断すれば、監査リスクを上げることになります。

Q6: 統制リスクと発見リスクの関係がよく分かりません。統制リスクが高く評価されたら発見リスクも高くなるのですか?

A6: 発見リスク(detection risk)とは、監査人にとっては「許容可能な発見リスクの水準(acceptable level detection risk)」を意味するとお考えください。

統制リスクは企業の内部統制に起因する為、監査人が直接リスクの水準を変動させることは出来ません。一方、これに対して、発見リスクは監査の内容に起因する為、監査人は監査手続きの範囲を広げたり、実証手続きを増やしたりすることによって、発見リスク(detection risk)を低く抑えることが出来ます。その為、発見リスク(detection risk)が低いということは、監査人にとっては発見リスクを「低く抑えなければならない」ことを意味します。

統制リスクが高く評価されたといういうことは、重要な虚偽の表示が発生するリスクが高くなる為、監査人は重要な虚偽の表示を見逃さないように発見リスクを低く抑えなければなりません。言い換えれば、許容範囲な発見リスクの水準は低くなります。

Audit Reporting (財務諸表監査報告書)

Q1: Incentive と Rationalizations の違いがよく分かりません。それぞれ一体どのような意味なのですか?

A1: Incentive とは、不正を行う直接的な動機となるものです。これに対し、Rationalizations とは、不正を行う直接的な動機とはならないものの、不正を正当化するために利用される可能性のある組織風土、経営者の態度などをいいます。言い換えれば、不正の間接的な動機となるものです。

例えば、従業員間で給与の格差があるという組織風土があるとすると、この風土が直接不正を行う動機になるとは断言出来ません。ただ、給与の低い従業員が組織に不満を抱いて不正を行う可能性はあり、間接的に不正の動機となり得ることからRationalizationに該当します。

Q2: 適切な管理職の者(appropriate level of management)と経営者は違うのですか?

A2: はい。違います。適切な管理職の者(appropriate level of management)とは経営者のことではありません。経営者(CEO,CFO,COO)などよりも下位の役職にある者、例えば、営業部長(operating manager)、経理部長(controller)、財務部長(treasurer)などを指します。

例えば、財務報告に重要な影響を与えない軽微な不正に関しては、経営者や取締役会へ報告する必要はありませんが、不正に関係する部署の責任者等、然るべき責任者には報告しておかなければなりません。

Q3: 「範囲区分(scope paragraph)」とは具体的に監査報告書のどの部分のことをいうのですか?

A3: 米国の監査報告書でscope paragraph と言えば、監査の性質および監査にあたり準拠した基準について記載された段落のことを指します。

公開会社に対する財務諸表を監査報告書では第2段落、非公開会社に対する財務諸表監査報告書では第3段落のAuditor’s Responsibility が該当します。

Q4: 見積もりと会計原則が不可分の場合とは、一体どのような場合ですか?

A4: 会計原則の変更に伴い、関連する会計上の見積もりを変更した時に、会計原則の変更による影響と会計上の見積もりの変更による影響を区別することが困難な場合のことです。

代表的な例をあげますと、減価償却方法の変更です。これまでは、有形固定資産の減価償却を定額法で行っていたのを当期から定率法に変更した場合などが該当します。

Q5: 「貸借対照表に対してのみの報告は無修正意見になる」というのは、一体どのような状況ですか?

A5: 米国においては、監査人が単独の財務諸表に対して意見を表明することが認められています。仮に監査人が貸借対照表のみに意見を表明することに同意し、かつ監査人が貸借対照表に重要な虚偽の表示がないという合理的な根拠を得ることができた場合は、無修正意見を表明します。

Q6: BSは無修正意見を表明し、PLは意見差し控えを表明するという状況はピースミール・オピニオン(Piecemeal opinion)にあたらないのですか?

A6: Piecemeal opinion (ピースミール・オピニオン)とは、財務諸表全体としては不適正意見(意見差し控え)を表明しなければならないような重要な虚偽の表示(監査範囲の制限)があるにも関わらず、部分的な情報に対して無修正意見を表明することで、全体としての監査意見をごまかすことを言います。

Internal Control (内部統制)

Q1: 「権限と責任の割り当て」は「職務の分離」とは違うのですか?

A1: 「権限と責任」とは、例えば企業内に設置する部門(営業部門、経理部門、財務部門、内部監査部門など)、部門内の職階の割り当て(部門長、マネージャーなど)、部門内・部門間の指揮系統、報告ラインといった組織全体に関わる広い範囲の権限と責任を表しています。一方、「職務の分離」とは内部統制の機能という狭い範囲での権限に関するもののことを言います。

Q2: 記号と関連手続きとの関連性を理解する良い方法はありますか?

A2:  私が考える3つの重要なポイントをお伝えします。

①、テキストに示されている基本的な業務フローをきちんと理解して頭に入れておく。

②、問題文から、「入力される情報は何か?」「出力される情報は何か?」を把握して、そこから途中のプロセスを類推する。

③、記号の形の意味を覚える必要はないが、問題情報からパターンが分かれば、選択肢から絞り込むには有効。

ぜひ、試してみてください。

Q3: 顧客勘定 (customer account)とは何ですか?

A3: Customer account (顧客勘定)とは売掛金勘定のことです。通常、売掛金を計上する仕訳を行うときに、相手の顧客名を補助的な情報として記録し、顧客別に売掛金を管理できるようにします。顧客別に売掛金を記録した帳簿を「売掛金補助元帳 (accounts receivable subsidiary ledger)」といいます。

Q4: 統制勘定 (control account)とは何ですか?

A4: 統制勘定とは、ある勘定科目を月次別に合計、年度会計などの大きな単位でまとめた勘定のことを言います。

例えば、売掛金は通常経営管理目的により顧客別に計上されますが、貸借対照表に表示する時には、そのような細かい情報まで開示する必要は無い為、集約した合計額のみが表示されます。このように財務諸表で表示する金額を集計する為に統制勘定が用いられます。

特定の勘定科目を詳細に分類した項目が計上される帳簿を補助元帳 (subsidiary ledger)といい、統制勘定や補助元帳のない勘定科目が計上される帳簿を総勘定元帳 (general ledger)といいます。

Q5: 「統制リスクを低く設定するには、統制テストが必要であり、個々の取引についてのテストは限定的なものとすることが出来る」とあるのですが、一体どういう意味ですか?統制リスクを低く設定するには、発見リスクを高くすればいいのではないですか?

A5: 統制リスクの定義を確認しましょう。

統制リスク虚偽の表示が、内部統制により防止または発見されないリスクのこと

この統制リスクを低く設定するということは、会社の内部統制が有効に機能していることであり、そのことを確認する為に統制テストを実施します。ご指摘の発見リスクとの関係は、統制リスクが確定してから以降の手続きです。

具体的な順序を考えてみましょう。

①監査人は許容できる監査リスクのレベルを設定し、勘定ごとに固有リスクを設定する。

②監査人は過去の監査実績などに基づいて、統制リスクを想定する。

ご指摘の問題はこの部分の段階です。統制リスクを低く設定するということは、会社の内部統制が有効に機能していることを想定してしまう為、その根拠が必要になります。(内部統制が期待出来ない場合は、統制のリスクを高く設定することであり、以降の手続きは行いません)

そこで、本当に低く設定できるかどうかを確認する為に、統制テストを実施します。この結果、統制のリスクを確定します。

③監査リスク=固有リスク×統制リスク×発見リスク に応じて、発見リスクを設定します。その結果、詳細なテストや実証性テストの程度が決まってきます。

統制リスクが低ければ、発見リスクは高くても構わなくなり、実証性テストの範囲は」広くせずに済みます。つまりは、限定的ということです。

Substantive Tests (実証性テスト)

Q1: Proof of cash とは一体どういう意味ですか?また、月次明細と関係があるモノなのですか?

A1: 「Proof of cash」とは銀行勘定調整表(bank reconciliation)と同じ意味です。

例えば、12月末時点の銀行勘定調整表を作成する為には、未達預金(deposit in transit)や未決済小切手(outstanding check)など、銀行が翌期に処理している入金・支払の中に、会計上は当期に認識すべきものがないかどうかを確かめる為、12月の口座の増減明細 (bank statement)を入手する必要があります。

月次明細とは、この12月時点の口座増減のことです。確認状は12月時点における預金と借入金の残高のみを確認するものであり、期中の増減に関する情報を得ることは出来ません。

Q2: 銀行勘定照合表 (bank cutoff statement) ではカイテイングを特定出来ないのですか?

A2: Bank cutoff statement (銀行勘定照合表) とは、ある口座の翌期開始以降8~10営業日における増減を記載した書類です。カイティングは複数の口座を持っている企業における、口座間の支払と入金のタイムラグを利用した不正です。

ですので、1つの口座の入金と支払しか記載されていない銀行勘定照合表を見ても、カイティングに気付くことは出来ません。カイティングを特定する為には、複数の口座の入金・支払状況を比較して銀行間振替明細表 (bank transfer schedule) を作成する必要があります。

Q3: 「発見リスクが低い場合には、積極的確認状が通常使用される」という記述が理解できません。発見リスクが低い場合は、消極的確認状を送れば済むのではないのですか?

A3: 発見リスク (detection risk)とは「許容可能な発見リスク (acceptable level detection risk)」のことを指します。

「発見リスクが低い」とは、「発見リスクを低く抑えなければいけない」ことを意味します。許容可能な発見リスクの水準を低く抑える為には、監査手続きを厳しく実施しなければいけません。

その為、通常は消極的確認状よりも証明力の強い積極的確認状が用いられます。

Q4: 確認状を送付するのは監査人ですか?それとも依頼人ですか?

A4: 確認状は監査人が自分で顧客へ送付(投函)しなければいけません。

なぜなら、依頼人に確認状の送付を任せると、依頼人が勝手に確認状の回答を記入して返送する可能性があるからです。

なお、確認状は監査人ではなく依頼人の名前で送付します。これは事情を知らない顧客に、確認状が監査の為に送付されたものであることを明確に伝える為です。

Q5: 買掛金残高を前期と当期で比較する分析的手続は、どうして網羅性をテストする手続になるのですか?

A5: もしも、当期の買掛金残高が当期と比較して著しく減少していた場合、仕入取引の計上が漏れている可能性があります。その為、期中の仕入取引がすべて計上されているかどうか(つまり網羅性)を検証する際に、検証が必要な勘定科目の見当を付けることが出来ます。

ただし、分析的手続きだけでは、仕入取引の計上漏れの疑いがある、ということしか分かりません。

実際に計上が漏れた取引が存在するかどうかは、他の実証手続を実施しなければ判明しません。その為、分析的手続では買掛金の実存性、評価、権利と義務をテストすることは出来ません。

Q6: 経営者確認書は、なぜ正確性をテストする手続になるのですか?

A6: 通常、経営者確認書では棚卸資産、仕入、買掛金について直接記載するのではなく、お持ちのAUDのテキストなどにも必ず記載があると思うのですが、「正しく記録されなかった重要な取引は存在しない」 (There are no material transactions that have not been properly recorded in the accounting records underlying the financial statements.)に集約して記載します。

この文章は Assertion (アサーション) でいうところの、取引の正確性を表しています。

Audit of Internal Control over Financial Reporting (財務報告に係る内部統制監査)

Q1: 「経営者は内部統制の有効性の評価についての結論を記載しなければならないが、財務報告に係る内部統制における不備の有無について言及する必要はない」とあるのですが、”有効性” と “不備” は互いに関連する要素だと思えてしまい、この文章の意味がよく分かりません。不備があれば、有効ではない、不備がなければ有効、というわけではないのですか?

A1: ご指摘の通り、内部統制に関して、重要な欠陥 (material weakness) が発見されれば有効とは言えず、発見できない場合を有効とします。

ここでは、PCAOB基準 Sec.404 で要求されている経営者の内部統制報告書での書き方について述べている内容です。

すなわち、報告書では有効性の評価を述べればよいのであって、有効でない場合の不備をあげつげらうことを目的とするのではない、ということを意味しています。

Other Audit Procedures (その他の監査手続き)

Q1: Interim financial statements (中間財務諸表)と期末財務諸表を比較すると、なぜ後発事象についての証拠が得られるのですか?

A1: 通常、期末監査は期末日から数カ月間にわたって行われる為、次期の第1四半期の財務諸表を入手できる可能性があります。

例えば、2018年の年度末の財務諸表を監査している場合、2019年第1四半期の財務諸表と比較することによって、2019年度の取引として認識しているが、本来は後発事象として2018年の年度末財務諸表に認識すべきであった取引に気付くことが出来ます。

Other Considerations in Audits (監査におけるその他の考慮事項)

Q1: Conflict-of-interest statements (利益相反の報告書)とは一体何のことなのですか?

A1: Conflict-of-interest statements (利益相反の報告書)とは、取締役が行った利益相反取引を確認した監査報告書のことです。

利益相反取引とは、会社との取引によって会社や自己または第三者に不利益または利益を与える恐れのある取引のことです。

取締役が自己または自己の利益と関連性の強い第三者と会社との間で売買や融資などの取引を行うには、取締役会の承認が必要です。

Audit Procedures (監査手続き)

Q1: AUDを勉強する際に、FARの知識はどれくらい必要ですか?

A1: FARの知識は、AUDを学習する際にも必要となります。

例えば、会計処理の誤りについて判断する問題を解く際は、FARの知識があることが前提となります。FARの学習が未了の場合は、すべての内容を学習する必要はありませんが、公会計以外の基本的な知識は一通り学習しておくことをオススメします。

Accounting and Review Services (会計及びレビュー業務)

Q1: Attest engagement と Attestation engagement の違いは何ですか?

A1: Attest engagement と Attestation engagement は同じ意味です。

どちらも、CPAがSSAEに準拠して実施する業務のことを指し、「証明業務」を訳しております。

Professional Responsibilities (監査人の責任)

Q1: Blind trust (白紙委任)とは一体どういう意味なのですか?また、これが直接的な金銭的利害に相当する理由は何なのでしょうか?

A1: Blind trust (白紙委任)とはInvestor がクライアントの資産について全権委任を受けている状態のことで、資産を売却しようが処分しようがすべて委任されています。

CPAがこのinvestmentを保有していると、

CPA→investment→client

の関係により、そのクライアントの経営をコントロール出来てしまう為に、直接的利害となってしまいます。

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